先日、患者さんとの問診中に主訴ではないのですが、「舌が痛くて色々検査を受けたけど、全く異常なし。鍼でなんとかなる?」と言われました。
これは「舌痛症」と言われるもので、年に数例ですが相談を受けることがあります。そこで今回はこの「舌痛症」について書いていきます。
舌痛症とは?
「舌痛を主訴として他覚的に舌に異常が認められず、また臨床検査でも異常が無いと定義されるもの」と定義されています。
舌痛症の特徴
①中年以降の女性に多い
②持続性、限局性の自発痛。特にヒリヒリ、ピリピリ感を訴える。
③両側の舌縁、もしくは舌尖部に多い。
④痛みは食事や会話をする時には消失し、接触痛や刺激痛はない。
⑤舌に異常が見られない。
⑥臨床検査に異常がない。
舌痛症はハッキリとした病変がないのが特徴で、今のところ原因は分かっていません。中年以降の女性に多く見られることから、性ホルモンの異常、ストレス、免疫系の異常などが関係しているのではないかと考えられています。また会話や食事時に痛みを感じないことから、不定愁訴と捉えられています。
東洋医学から見た舌痛症
東洋医学では舌は経脈を通して五臓六腑と連絡し、五臓六腑の状態が舌に反映されると考えています。中でも舌と心、脾胃とは密接な関係にあります。《諸病源候論・口舌瘡候》では、「手少陰、心之経也、心気通於舌。足太陰、脾之経也、脾気通於口」(手少陰は心の経、心気は舌に通じる。足太陰は脾の経、脾気は口に通じる)とあります。
舌痛症に関する最も古い文献としては《霊枢》が挙げられます。その中で、「是主脾所生病者、舌本痛」と記載されています。それ以降、《備急千金方・舌論》で「多食甘則舌根痛而外髪落(甘いものを多く食べると舌根が痛み、髪が抜けてしまう。)」、《医学摘粹・雑証要法》で「舌之疼痛熱腫専責君火之昇炎(舌の疼痛や腫れは専ら君火=心の炎上によるもの。)」とあります。
舌痛症をどのように考えるか
東洋医学では舌痛症は熱との関係が深いものと考えます。
この熱を実と虚の二つのタイプに分けて考えます。一つは実熱(じつねつ)です。これは熱の勢いが盛んになったものです。もう一つが虚熱(きょねつ)です。これは水分が減って発生する熱です。
実熱タイプの舌痛症の具体的な症状
舌の痛みが強い、舌の色が赤く、口渇、口が苦い、怒りやすい、不眠、小便の色が赤い、便秘。
虚熱タイプの舌痛症の具体的な症状
舌が痛み、舌が全体的に乾燥している、寝汗をかきやすい、イライラしやすい、不眠。
鍼灸での施術
鍼灸ので施術はまず熱がどのタイプに相当するかを判断し、舌が五臓六腑に連絡することからどの五臓六腑に異常があるかを見極めてから施術を行います。
舌痛症によく使用するツボに大陵穴があります。
大陵穴はちょうど手首の真ん中にあり、経絡では手厥陰心包経の穴になります。《針灸大成》という古医書の中に、「心包経実証、大陵主之」と書かれています。つまり実熱タイプの舌痛症には大陵穴を取りなさいということで、実熱タイプのみならず虚熱タイプにも用いても、満足行く効果を得ることができます。
舌痛症に対して鍼灸を施した場合、患者さんは非常に満足されています。もしお困りでしたら鍼灸の施術を受けてみては如何でしょうか。
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