アトピー性皮膚炎

患者さんとの会話の中で、知り合いの方がアトピー性皮膚炎で、症状がかなり酷く治療に難渋しているとのことで、鍼灸を受けてみるのも一つの選択肢であることを伝えました。
鍼灸の施術によりアトピー性皮膚炎の症状緩和に役立つことができ、鍼灸がアトピー性皮膚炎に効果的であることはあまり知られていないようです。当院でもアトピー性皮膚炎を主訴とした患者さんの施術経験がいくつもありますが、皮膚科との併用で痒みや皮膚症状の改善を図ってきました。
そこで今回は「アトピー性皮膚炎」について書いていきます。

アトピー性皮膚炎とは?

日本皮膚科学会ガイドラインによれば、アトピー性皮膚炎は増悪と軽快を繰り返す掻痒(痒み)のある湿疹を主な病変とする疾患で、患者の多くにはアトピー素因(アトピー性皮膚炎を引き起こす遺伝的な体質)を持つとあります。具体的な特徴は、
①かゆみがある。
②成長するにしたがって各年齢に特徴的な症状を示しながらだんだんとよくなる。
③慢性・反復性の経過をたどる。

アトピー性皮膚炎は子供に多く見られ、思春期を過ぎる頃には減少する傾向にあります。大人の場合には、大人になってから症状が出ることがありますが、この場合は子供のころからの症状が続いていたり、治まっていた症状が再発するケースがほとんどです。

アトピー性皮膚炎の症状

乳幼児

乳児期では、顔や頭部を中心に赤味、皮膚が白く粉を吹いたりガサガサになる、ただれ、かさぶたが見られます。浸出液によってジュクジュクするのが特徴です。また身体の各部にも見られ、首や肘、膝の内側などくびれのある部位にできやすく、左右対称に生じます。

小児期

眼や口のまわり、膝や肘のくぼみを中心に、カサカサとした湿疹が見られます。湿疹をかいていると皮膚がしだいに厚くなります。

思春期・成人期

この時期には小児期の症状に加え、顔や首に発赤を伴う症状が現れます。額は皮膚が厚くなっており、重症の場合には全身に皮膚の厚みを伴う皮疹、小豆大ほどの硬いしこりが見られ、かゆみは強いです。
成人型では赤みの強いジュクジュクした発疹、かきつぶした跡が目立ったり、首に色素沈着が見られます。

小児湿疹 玄鍼灸院
乳児期に湿疹のできやすい場所

アトピー性皮膚炎の原因

現在のところアトピー性皮膚炎の根本的な原因はわかっていません。ですが以下のようなことが発症に関わっていると考えらています。

バリア機能低下

皮膚には水分の蒸発を防いだり、外からの異物をブロックするバリア機能が備わっています。刺激や乾燥などによってバリア機能が低下すると、アトピー性皮膚炎が起こりやすくなります。

過剰な免疫反応

寄生虫などの異物が体内に侵入してきたときの防御反応を2型免疫反応といいます。アトピー性皮膚炎では、この免疫反応が異物の侵入とは関係なく過剰におこり、皮膚のバリア機能の低下やかゆみが引き起こされると考えられています。

かきむしり

痒みのために皮膚をかきむしると、その刺激によって2型免疫反応が強くなり、かゆみが強まるという悪循環が起こります。

アトピー性皮膚炎 玄鍼灸院
バリア機能

東洋医学から見たアトピー性皮膚炎

東洋医学では、アトピー性皮膚炎の痒みは「痒風」「風掻痒」などの範疇に入ります。痒みは「風」との関係が深くあり、「諸痒皆風に属す」と古来から言われています。この風は外風と内風に分けて考えます。外風は気候環境を反映したもの、内風は体内の臓腑機能が失調することにより生じるものとして捉えています。

湿

アトピー性皮膚炎のジュクジュクとした発疹は「湿」との関係が深くあります。風と同様に外湿、内湿に分けて考えます。外湿は外界から侵入した湿邪によるもの、内湿は脾の機能が失調し皮膚に停滞して皮膚疾患を引き起こします。湿は取り除きにくく、症状が慢性化し、皮膚症状が悪化する要因となります。湿による皮膚症状は湿潤し、びらんします。また長く湿が体内に留まると湿熱に変化し、症状が全身に広がり、皮膚症状に発赤、湿潤、びらんがみられ、かゆみが強く、非常に治りにくくなります。アトピー性皮膚炎の難治例では、この湿を取り除くことが課題となります。

皮膚は内臓の鏡

「皮膚は内臓の鏡」ということわざの通り、皮膚と内臓(五臓六腑)の間には深いつながりがあります。特に五臓六腑の一つである肺は「肺主皮毛」《肺は皮毛(ひもう)をつかさどる》と言われています。皮毛は皮膚や頭髪、体毛のことと理解されています。つまり肺が皮膚や頭髪、体毛を管理しているということです。
脾(主に消化吸収をする)の働きが低下すると、全身に気を行き渡らせることができなくなり、水の流れが悪くなり、内湿が生じてしまい、さらに外湿び侵入を受けやすくなります。脾・肺の働きが悪くなると皮膚のバリア機能が発揮できなくなります。
肝(気を伸びやかにし、血を貯蔵する)の働きは、ストレスの多い現代社会においては悪くなりやすく、気や血の流れが悪くなってしまいます。
これらの肺・脾・肝の働きが悪くなると気・血・水の異常が発生して、皮膚病変が起こると考えます。

アトピー性皮膚炎に対する鍼灸の施術

現在現れている皮膚の状態をよく観察し、湿熱・瘀血等のいずれによるものなのかを判断し、また五臓六腑の虚実を判断し、それに見合ったツボを選択し、鍼灸を施していきます。
アトピー性皮膚炎の鍼灸施術では、変化が現れるには5〜6回ほどかかります。一度の施術では劇的に変化を感じることはありません。鍼灸院に来院される患者さんの多くが、長い経過を経ているのでその分どうしても効果が現れるまでに時間と施術回数がかかってしまいます。しかし根気強く通院していただくと痒みが軽減し、皮膚症状が改善してきます。
鍼灸の施術をご希望の場合、当院におまかせください。

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