患者さんとの会話の中で、よく「ストレス」の話題が出てきます。この「ストレス」によって何もやる気がでない、外に出たくない、落ち込んでしまう等の症状を訴えることがあります。そこで今回は、「ストレス」について書いていきます。
ストレスとは?
「ストレス」と言う言葉は、もとは物理学の分野で使われており、物体の外側からかけた圧力によって歪みが生じた状態のことを言います。例えばストレスを風船とすると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言います。このストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。体に置き換えると、身体や心にかかる外からの刺激をストレッサー、そのストレッサーに応じようとして、心や身体に生じる反応をストレス反応と言います。
このストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理・身体・行動の3つに分けることが出来ます。
・心理面
元気がない、イライラ、不安、抑うつなど。
・身体面
頭痛、肩こり、腰痛、眼の疲れ、動悸、胃痛、不眠など
・行動面
飲酒や喫煙量が増える、仕事でのミス、ヒヤリハットなど
以上のような症状が長く続いていると、ストレス状態になっている可能性があります。
東洋医学−七情
東洋医学では、精神と肉体は一つであると考えており(心身一如)、古代からすでにストレス学説と同じ考えかたに立って医療が行われてきました。
精神的な情緒の変化を7つの要素に分けて、これを「七情」といい、度を過ぎると病気を起こす原因になると考えます。
七情は、怒・喜・憂・思・悲・驚・恐のことをいいます。
この七情は、内臓の働きに影響を与える作用があり、およそ次のような関係となります。
・怒
五臓の「肝」を傷め、逆に「肝」の働きが鬱滞すると怒りやすくなります。「ストレス」は「肝」と深いつながりを持ちます。
・喜
本来はよい情緒状態ですが、度が過ぎると心臓や脳を表す五臓の「心」の変調引き起こします。たとえば憧れの芸能人を見て卒倒するようななものです。
・憂、思
五臓の「脾」を傷めやすく、度が過ぎると、食欲不振などがおこります。例えば失恋して憂いが深まると、ご飯が喉を通らなくなったりします。
・悲
五臓の「肺」を傷めます。やる気がでない、無気力、声が低いなどの症状が出てきます。
・驚、恐
五臓の「腎」を傷めます。動悸、精神不安、熟睡出来ないなどの症状が出来てきます。
上記の【肝・心・脾・肺・腎】は東洋医学における臓腑理論ですので、現代の内臓の考え方とは違いがあります。
肝
ストレスと特に関係が深い臓腑は、「肝」です。ですので、少し詳しく「肝」について書いていきます。
「肝」は現代の肝臓にかなり近い内臓系で、血液を貯蔵して、その血液を浄化し栄養を与え、そのきれいで栄養豊かな血液によって、 脳、目、筋肉、爪を養い、身体のあらゆる生理機能に必要な栄養を供給するという作用があります。精神的なストレスが異常に強いと、脳は酷使されます。その脳の活 動を支える「肝」は、大量のきれいで栄養のある血液を脳に送り続けなければならず、それがオーバーヒート状態に陥るようになると、 脳の活動が悪くなり、思考や判断が狂うようになります。またストレスが過度にかかっている状態では、イライラして怒りやすく、あるいは 落ち込み、不眠などの不安定な症状があらわれてきます。
ストレスがかかっているかどうかを判断する時には、爪をよく見ます。もし爪に縦に筋がハッキリと出ている場合は、本人に自覚が無くてもストレス状態になっていると判断します。
みなさんも爪を見てみては如何でしょうか?
東洋医学のストレスに対する考え方はこちらも参考にしてくだい。
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